人は怖いが擬人法は使う

ひさしぶりに外に出ることにした。図書館に本を返すついでに通帳の記帳をしてもらうつもりだ。

貯金を引き出すときにはいつもはカードを使っている。通帳はかさばるから持ち運ぶのに便利でない。落したりすれば恥ずかしかったりもする。だからカードを財布に入れて持ち歩いている。

カードばかりを20回ほど使うとATMが警告してくる。「たまには記帳しろ」「そろそろ記帳しろ」。普段から「パスワードを変更しろ」とうるさいが、この警告もそれと同じくらいうるさい。「カードのくせに人間様に指図するなんて」と傲慢(ごうまん)にも思う。カードの親切心かなにかが私にそれを教えてくれているのだ。いたく感謝しているよ。ありがとう、カード。

図書館に本を返して、ATMに寄る。今日は並んでいる人が居ない。「通帳を開いて入れろ」とATMが私に命令する。ATMは自分の能力を把握しているようだ。「通帳を正しく開いていないと自分には処理できない」。ATMは言う。

ギッガギッガギイギイギイ。

ATMが記帳されたそれを吐き出す。「ありがとうございました」ATMが言う。私は何も言わずに前を去る。

帰り道には雪が降った。「1月のさよならかな」とそんなことを思った。