北山 猛邦『「アリス・ミラー城」殺人事件』

『アリス・ミラー城』殺人事件 (講談社文庫)

『アリス・ミラー城』殺人事件 (講談社文庫)

友人にすすめられて読む。曰く「『インシテミル』は悪くないんだけど、その前に読んだ『「アリス・ミラー城」殺人事件』が凄すぎた。」「これは読むしかない」そう思った私は図書館で借りることにした。

物語の舞台はアリス・ミラー城である。扉が果てしなく続いて見える「合わせ鏡の間」や人の通れない小さな扉のある「アリス・ドアの間」など不思議なつくりの城である。ここに集められたのは十人の探偵たち。そして殺人が起きる。

とまあ、そんな話。私がこの本を読み終えて思い出すのは『ロートレック荘事件』である。読んだことがある方なら「ああ、ああいう類か」とか「ネタバレやめてくれ」とか思われるかもしれない。つまり本書のトリックは、登場人物を騙すことよりは、むしろ読者を騙すことを目的としている。

すべて読み返したわけではないが、本当に矛盾なく書かれていたか疑問である。読者はおそらく騙されるが、登場人物たちのやりとりがおかしくなってはいないだろうか。

あともう一点。動機の弱さや、各登場人物の状況への対応が自然でないように感じた。

友人の言う『インシテミル』がかすむという意味は分かった。確かに本書の後に読むと軽く感じるように思う。