『ヒトラーの防具 上巻』帚木 蓬生

ヒトラーの防具(上) (新潮文庫)

ヒトラーの防具(上) (新潮文庫)

今日の一冊は『ヒトラーの防具 上巻』帚木 蓬生。はじめは本屋で見かけた。そのときは、特に読みたくなかったのだけど、図書館で返却棚に二冊セットで置いてあったので、借りた。本書のために、二冊返して五冊借りるという不思議なことが起きた。

物語は、一つの剣道防具を見るところからはじまる。ヒトラーに献上されたという、その防具とノート。主人公はノートの持ち主。ドイツ人の父と日本人の母を持つ、香田光彦。ベルリンの駐在武官補佐官。

上巻ではパリ陥落までのナチスドイツの隆盛とその国内での実体を、主人公が静かに見つめる様子が描かれる。登場人物には、ナチス信奉者の上官や、全体を見ている上官、オーボエ奏者で下宿先の大家をつとめるドイツ人や、精神病院で働く医師の兄などが居る。バリエーション豊富というか、バランスがよいというか、まんべんなく配置されている。

ただ、内容は先にも書いたように、それらの人と話したりしながら、ただ見つめている。という感覚。ユダヤ人がひどい目にあっているからといって、反射的にヒトラー暗殺をくわだてたりはしない。本当に、情勢を見つめているという感じ。きっと史実に基づいて書かれているんだと思う。

税別743円。