一日一冊『ロートレック荘事件』筒井 康隆

ロートレック荘事件

ロートレック荘事件

今日の一冊は『ロートレック荘事件』筒井 康隆。私の中での筒井康隆、二冊目。四冊も筒井康隆を借りてしまったうえ、さらに一冊買ってしまっているので、もうどうしようもない。しばらく筒井地獄である。贅沢な悩みだ。

さて、ロートレック荘事件。前に読んだ『家族八景』は、そのタイトルからは想像もできないほど良作だったので*1、自然と期待が高まっていた*2。最終評価としては、なかなかやりおるな、くらいの感じ。

正直な話、第二章の時点で既に違和感があった。しばしば、混乱した。結局こういう意見を書くのは「してやられた」人間には、ごく自然なことで、「してやられた」ということの証明でしかない。「してやられた」ことの、恥ずかしさもあって「違和感が」なんてことを格好つけて書くものに違いない。私の場合は、単純に読解力が乏しいから、作者のねらい通りのところに落ち着かず「なんだなんだ」という混乱に至り、違和感が生まれた、とそういう流れだ。

カバーは、すこし悪いなと思う。「映像化不能。前人未踏の言語トリック。読者の挑戦するメタ・ミステリー。この作品は二度楽しめます。書評家諸氏はトリックを明かさないようにお願いします。」注意書きだか、煽りだか分からないが、読めば分かる。

ある一行を書いてしまえば、トリックの説明など不要になるほど大胆なトリックで、ここまでの文章で既にネタバレなど終えてしまっている。未読なら一読を薦めたい。

税別1262円。オシャレな装丁や絵画をカラーで挿入したりが値段に響いたのかな。まあ、そういう部分もまた、この本の評価を押し上げる要因だと思えば、良いのかもしれない。

*1:読む前からタイトルの良さは、分からないものだ

*2: 佐藤友哉水没ピアノ』もそうだけど、良作から読むというのも考えものだ