日記の書きかた

まず事実を一つだけ書く。

なんだっていい。友人の言葉でもいいし、天気でもいいし、飯でもいい。事実を一つだけ書く。ここに嘘を書いてはいけない。そして、たくさんのことを書いてはいけない。はじめに書くべきことがたくさんあることはよくない。ハードルは低いほうがいい。事実を、一つだけ、それが大切だ。

事実を一つ書いたら、それを説明する段落を一つおこす。なぜなら、きっとそれを読む人には、その状況が理解できないからだ。それを読む人は、自分でないとは限らない。自分もまた、その事実を読んで状況を理解できない一人になりうることを忘れてはならない。だからこそ、一つの事実を細かく説明する。

そこで重要なのは、ただ事実を伝えるために説明するのではつまらない、ということ。それは、報告書を書くのであれば、もちろん大切なことだが、日記を書くのであれば、そうする必要はない。すべてが事実でなくてもいい。むしろ、事実は最初のそれ一つだけでもいい。適当に嘘や脚色を加える。そこには悪意が含まれていてもいい。どうでもいいことや、わかりきったことを、言いかえて二度三度くりかえすのもいい。とにかく、つまらないものにならないようにする。楽しくなくてはならない。

だからといって難しく考える必要はない。書いてみて、つまらない内容だと思っても、消す必要もない。「チョココロネをどう食べるか」そんなことをだべっている女子高生が主人公になれる時代だ。それがつまらないとは言いきれない。それをおもしろいと感じる人もいるだろう。自分がそれになるかもしれない。しばらく経ってから読み返すとおもしろくなるかもしれない。

事実を一つ、そのまわりに嘘やらなにやらが塗りたくられていて、さらに面白くもなんともない。これが日記でなくて、なんだろうか。

現実も日記も構成要素は似たようなものだと、私は思う。