透明人間

いつものように家に帰ると、明かりがついていて、扇風機が動いていた。しかし、部屋には誰も居なかった。誰も居なくて、明かりがつくことはないし、誰も居なくて、扇風機が動くことはない。

だから、私は透明人間のしわざだと思った。誰も居ないのではなく、見えない誰かが居るのではないかと思った。誰も使っていないものが動いているのではなく、見えない誰かが使っているから動いているのだ。

しかし、すぐに気づいた。私の家族に透明なのは居ない。純色とは言えないが、色のたくさんついていることには違いない。私の家族はもっと汚い色がたくさんついているのばかりだ。それはもちろん、外面的な意味でも、内面的な意味でも、だ。

では、どうして、あれらの使わない明かり、使わない扇風機は、動いているのか。

簡単なことだ。汚い、無神経なやつらのしたことだ。どうして、そんな風になれるのか。私には分からない。