消臭スプレーと置くだけタイプのなにかを買った。

本は買わなかった。代わりに図書館でたくさんの本を借りた。読み切れないほどの本を借りた。ふと思った。目の前につまれたときに、やる気が出るものと出ないものの違いが、きっと好きか嫌いかの境界線だと思う。

僕は「納豆巻きが好きだ!」なんて言ってるけど、実際はそんなことない。目の前に、山ほど納豆巻きをつんだお盆を持った女の子がやってきて、「お嫁にしてください」なんて言われても、きっと僕の答えは「No」だからだ。それは納豆巻きに彼女が劣っているからではなくて、山のようにつまれた納豆巻きへの嫌悪感に引きずられる程度の魅力しか、彼女が持っていないからだ。だって、僕は彼女のことをよく知らない。

とにかく、僕は納豆巻きは好きだけど、毎日は食べたくない。女の子は好きだけど、毎日は見たくない。オンデマンドでいいんだ。僕が要求したとき、欲したときだけあればいいんだ。それはお腹が空いたときかもしれないし、淋しくなったときかもしれない。欲したとき、必要なとき、要求したときだけあればいい。それ以外のときは、ひっこんでいてくれと、そんな調子だ。

「納豆巻きと比べられる女の子なんてどうせ二次元だろ」なんて言うやつは大嫌いだけど、僕みたいに、自分の都合で好いたり嫌ったりするそんなやつは、僕だけじゃなくほかのみんなも嫌いなんだ。だから、僕は女の子に嫌われる。そんなやつは女の子はもちろん、男の子だって、小さなお友達も大きなお友達も嫌がるんだ。みんなみんな嫌なんだ。嫌いなんだ。

とは言っても、僕のそんな性格は、僕が女の子に嫌われる原因のほんの一つ、山のようにつみあげられた問題のほんの一つに過ぎないのだけど。