一日一冊『人間失格』太宰治

人間失格 (新潮文庫)

人間失格 (新潮文庫)

今日の一冊は『人間失格太宰治。図書館で、予約していた本を受け取りに行ったところ、受け取り口のすぐそばに置いてあった。電車枠用の本がなく、適当な厚さ、大きさであったことや、私に取ってくれと言わんばかりに置いてあったことがきっかけになった。ちょっとした、めぐりあわせだろう。

グレーの暗い背景に黄色や橙色の細い線で落書きされたような表紙に、白い文字で「人間失格」、赤い文字で「太宰治」と書いてある。新潮文庫。当然だが、デスノではない。(はてなでは違う画像が表示される)

読んでおくと良いではなく、読まなければならない。面白い、面白くないではなく、読まなければならない。そういった印象をもっているのは、この本が内容の説明をする必要もないくらいに有名だったり、読書感想文で嫌々読まされる一冊だからだろうか。

私は作文が大嫌いだったことや、不勉強なことから、この本の内容を覚えていない。筆者の名前でさえもあいつだったかこいつだったか、といった調子だ。実を言うと高校時代に一度は読んだ。しかし、繰り返しになるが、内容をほとんど覚えていない。麻薬だか覚醒剤だかの薬が出てきて「失格」になる話という程度にしか覚えていなかった。

人間不信の男が廃人になる話。最後はどうでもよくなったように「幸福も不幸もありません。ただ、一さいは過ぎて行きます」となっている。生きているが死んでいる状態になる。

どうでもよくなって、そういう気持ちでなにかをしたら裏目に出て、さらにどうでもよくなって……そんなサイクルが見える。どこかで見たようなサイクルが見える。

最後の男の状態をすこし幸福に思う。男自身は「幸福も不幸も……」と言っているが、私は幸福ではないかと思う。学校にも行かず、外にも出ず、ただ家でもんもんと過ごしていたころ、死にたいと言っていたころの自分はちょうどこんな風になるのに憧れていたのだと思う。おかしな話だ。

280円。青空文庫で読めるけど、手軽さが良い、280円なら良し。