嫌な夢
風呂からあがると母が帰っていたので、今朝見た夢の話をした。
「今日、朝、変な時間に目が覚めてさ……、いや、まあ実際に起きたのは遅かってんけどさ。嫌な夢でさ。それがさ、父さんと僕以外みんな死んでる夢やってん。」
「ふうん。それは変な夢やね。」母は本を眺めつつ、いい加減な返事をした。
「おかしいやろ?順番から言えば、父さんが一番最初に死ぬのにな。」
「そやな」
なんてことのない会話だけど、違和感があった。
あとから思ったことが2つある。
1つは、死ぬことに順番なんてない、ということ。たとえば、父さんより先に僕が、明日死ぬかもしれない。
もう1つは、あの夢は、父さんと僕だけが生きているわけじゃなく、父さんと僕だけが死んでいたのかもしれない、ということだ。