一日一冊『西の魔女が死んだ』梨木 香歩

西の魔女が死んだ (新潮文庫)

西の魔女が死んだ (新潮文庫)

今日の一冊は 『西の魔女が死んだ』梨木 香歩。

この本で描かれるのは、魔法ではなく、(より自然に近い)生活だ。西の魔女はファンタジーの世界に出てくるような魔法らしい魔法は使わない。魔女は、のんびりと植物などと戯れながら生きている老婆だ。

お話自体は、ほのぼのとした雰囲気の中、登校拒否の少女がおばあちゃんと生活する、ってただそれだけのこと。だけど、そんなに嫌いじゃない。

というのは、私も主人公同様に、いわゆる登校拒否をしていた。もっと言うと、私もまた、しばらく母の実家、母方の祖母のところに居た。そして、主人公のように、学校にまた復帰できた、という点でも同じだ。

私の祖母はもちろん、魔法なんてものは使えない。でも、しそのジュースを作ってくれたり、スイカを食べたり、ふかふかした布団で寝たり、自然のまわりで過ごしたあと、私は確かに学校に復帰できた。ある意味で魔法をかけられたみたいに、だ。

私が祖母の家でやった、最も基本的なことは、パソコンに触れないこと、早寝早起きをすることだ。朝のラジオ体操なんて、こっちじゃ考えられないけど、向こうじゃ普通にしていた。だから、西の魔女が規則正しい生活を求める場面なんかは、既視感がはんぱない。
そんな風に、主人公と自分との間に、共通点がたくさん見えたせいか、物語の空気の中にすっと入っていけたように思うし、嫌悪感みたいなものもなく読めたように思う。

ああいう生活に憧れる自分も居る。でも、一方で、真に安定した生活というのは死んでいるのとそう変わりないんじゃないか、ってそういう考えを持つ自分も居て。うん。なんだかうまく言えない。ACのCMじゃないけど、苦しいのは生きてるからなんだ、ってある程度の苦しさを我慢しながら、生きていけるように、努力できるようになった。我慢できるようになったんじゃないかなと思う。本の感想と関係ねえな、こりゃ。

税別400円。ひとによる。自分は、これくらいなら許せる。思い出のトリガーのための投資だった感じがする。